メールサポートでいただいたご質問を紹介します。
【ご質問】
フォトアドバイスの講座を受講して、
人間の目とカメラでは全く性能が違う
ということがよくわかりました。
明暗差の大きい被写体をカメラで撮影する場合、
露出にして何段(EV)まで可能なのでしょうか?
【回答】
今回のご質問にある
明暗差をどこまで写真で表現できるか?は
「ラティチュード」という用語が使われます。
ラティテュード (latitude) の直訳は
地理の「緯度」です。
語源はラテン語「広さ、幅」の意だそうです。
この「ラティチュード」は写真用語で、
音楽や信号処理の分野では
「ダイナミックレンジ」の方が一般的です。
最近はカメラのデジタル化に伴い
キヤノン「Dレンジオプティマイザー」
のように「ダイナミックレンジ」が
使われるようになりました。
以下は写真用語の
「ラティチュード」で統一します。
数年前のメールサポートを振り返ると
「デジタルはフィルムに比べて白とび黒つぶれしやすい」
というご質問をよくいただきました。
当時はフィルムからデジタルに移行された方が多く
まだフィルムの感覚をお持ちだったように思えます。
そこで、まずはフィルムとデジタルの
差について説明します。
フィルムにはポジ(リバーサル)と
ネガの2種類があります。
ポジのラティチュードはおよそ5EV、
ネガはおよそ10EVです。
このEV(Exposure Value)とは
「露出値」のことでカメラに貯める
光の量と考えてください。
またEVは指数なので、EVの数値が
1増えるとカメラに貯める光の量が倍になり
EVが1減ると半分になります。
よくカメラの露出補正で+1EVとか言いますが、
これはカメラに貯める光の量を倍にして
写真を明るくするという意味ですね。
ポジのラティチュードが5EVあるということは、
2の5乗なので、32倍の明暗差を記録できる
ということになります。
ラチチュードの狭いポジフィルムは
コントラストが高く、パッキリした
被写体に向いています。
主に風景写真でポジフィルムが愛用されました。
一方、ネガのラティチュードは10EVなので
2の10乗で1024倍の明暗差を記録できる
ということになります。
チチュードの広いポジフィルムは
トーンの幅が広く、主にポートレート
などに向いていました
ネガフィルムは相当広い範囲の明るさを
記録できるので、プリント段階でかなり
補正ができます。
ネガフィルムは露出の失敗が少ない
といのはそういう理由です。
さて、デジタルカメラのラティチュードは
どうなるかというと、およそネガに近い
「5EV」と言われています。
したがってポジフィルム並みに
露出補正をしっかりやらないと
白とび黒つぶれが起こりやすくなります。
しかしながら、デジタルカメラには
フィルムには無いデジタル補正という
強力な武器があります。
たとえばRAW現像で(ある程度)露出を
補正したりコントラストの強さを
自由に変えることができます。
またHDRなどの画像処理を使えば、
相当広い範囲の明るさを表現することができます。
ただ、やみくもに明るいところから
暗いところまで表現したからと言って
いい写真になるとは限りません。
暗いところをあえてつぶす
明るいところをあえて飛ばすことで
被写体がより浮き上がることもあります。
たとえばこちらの受講生の作品
白とび黒つぶれを積極的に使うことで
主題がより引き立つというのが
わかると思います。
「二人の道」ゆんさん
「夏の花」STHさん
大事なことは、
(1)光をよく見て何を表現したいか?を考えること
(2)適切な露出補正を選択すること
(3)白とび黒つぶれを恐れないこと
ですね!
いいね!して最新記事を受け取る
この記事を友達に教える
全国の生徒さんが撮った日本のうつくしい「今」を見る